- / 07.07.17 記録
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― 現代詩フォーラム選集 ―
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弱いものから消えてゆく
2007.08.23 Thursday | 14:16
でもルールー
思ってたより
生きることは難しいよ
真実は疑わなくちゃならないし
親切は裏か表かわからない
マンボウの産む3億個の卵
だけどその中で生き残るのはたった
そうだねルールー
生きることは
どこか戦いに似ている
数万の蛙が産卵のため
池を目指し行進する
最近その通り道に道路ができた
誰もが何かから目を逸らして生きているから
本当のことを口にすれば
誰かの逃げ道をふさいでしまう
黙っているのが一番だと
ルールー
分かっているさ
けれど口を閉ざし
一人きり生きていくことはできない
できなかった
ウグイスが調子はずれの声で鳴く
けきょほけきょ
間違えるたび少しずつ上手くなっていく歌
ルールー
君を抱えうずくまっていた少女は
もういない
だから何もないところでつまずいて
ヒザをすりむいても
ゆっくりでいいよ
おいで
歩いてゆこう
作/ザラメ さん
思ってたより
生きることは難しいよ
真実は疑わなくちゃならないし
親切は裏か表かわからない
マンボウの産む3億個の卵
だけどその中で生き残るのはたった
そうだねルールー
生きることは
どこか戦いに似ている
数万の蛙が産卵のため
池を目指し行進する
最近その通り道に道路ができた
誰もが何かから目を逸らして生きているから
本当のことを口にすれば
誰かの逃げ道をふさいでしまう
黙っているのが一番だと
ルールー
分かっているさ
けれど口を閉ざし
一人きり生きていくことはできない
できなかった
ウグイスが調子はずれの声で鳴く
けきょほけきょ
間違えるたび少しずつ上手くなっていく歌
ルールー
君を抱えうずくまっていた少女は
もういない
だから何もないところでつまずいて
ヒザをすりむいても
ゆっくりでいいよ
おいで
歩いてゆこう
作/ザラメ さん
えいえんの夏
2007.08.23 Thursday | 14:15
八月が終わらなければいいと
願っていた
そのときわたしは
小学五年生で
朝顔を上手に育てることが出来なかった
そして
支柱にぴよぴよと巻き付いた
枯れた朝顔に
まだ毎朝ぼんやりと水をやってしまうような
そんな子供だった
一度だけ
八月の終わりに目を覚まして
日めくりを見たら
八月三十二日だったことがある
家の中には誰もいなくて
晴天なのにいやに薄暗かった
窓を開けたら
ぱたぱたと
蝉が死んで木から落ちてゆくのが見えて
見覚えのある夏は
そこにはなかった
食卓に置いてあった茹でとうもろこしは
腐っていて嫌なあじがしたし
どの漫画もおもしろくなく
遠くからサイレンの音がした
ぴかぴか光っていたのは
ランドセルだけだった
わたしは貧しい子供のように
膝を抱えて
夕立を見ているうちに
いつの間にか
ねむったみたいだ
翌日にちゃんと九月がきた
だが翌日は九月二日だった
昨日より大分くすんだランドセルをしょって
登校したら
九月をきちんと始めたともだちたちが
昨日なんでこなかったの
と机に座って笑ってた
以来
八月三十二日を過ごしたことはない
夏が終わらなければいいと思うたび
八月に閉じ込められて
膝を抱える自分の姿が見える
枯れてなお支柱に取り縋る朝顔のように
力無くくったりと横たわる自分の姿が
それは
大変ぞっとする光景である
夏は夏のままで
終わるのがいい
それがいっとう美しいと思う
作/吉田ぐんじょう さん
願っていた
そのときわたしは
小学五年生で
朝顔を上手に育てることが出来なかった
そして
支柱にぴよぴよと巻き付いた
枯れた朝顔に
まだ毎朝ぼんやりと水をやってしまうような
そんな子供だった
一度だけ
八月の終わりに目を覚まして
日めくりを見たら
八月三十二日だったことがある
家の中には誰もいなくて
晴天なのにいやに薄暗かった
窓を開けたら
ぱたぱたと
蝉が死んで木から落ちてゆくのが見えて
見覚えのある夏は
そこにはなかった
食卓に置いてあった茹でとうもろこしは
腐っていて嫌なあじがしたし
どの漫画もおもしろくなく
遠くからサイレンの音がした
ぴかぴか光っていたのは
ランドセルだけだった
わたしは貧しい子供のように
膝を抱えて
夕立を見ているうちに
いつの間にか
ねむったみたいだ
翌日にちゃんと九月がきた
だが翌日は九月二日だった
昨日より大分くすんだランドセルをしょって
登校したら
九月をきちんと始めたともだちたちが
昨日なんでこなかったの
と机に座って笑ってた
以来
八月三十二日を過ごしたことはない
夏が終わらなければいいと思うたび
八月に閉じ込められて
膝を抱える自分の姿が見える
枯れてなお支柱に取り縋る朝顔のように
力無くくったりと横たわる自分の姿が
それは
大変ぞっとする光景である
夏は夏のままで
終わるのがいい
それがいっとう美しいと思う
作/吉田ぐんじょう さん
のまど
2007.08.23 Thursday | 14:12
いくつもの停留場が
いっせいに
羽を広げ
南の方へ渡って行った
停まるべき場所を
失ったバスは
大人たちの口から口へと
走り続けている
高層ビルが突き刺さった
地平線の向こう側
人々はもう
何処にも行けない
気の早いタンポポが
春を待たずに
綿毛を飛ばす
少年が新しい角度へと
旅立っていく
作/Tsu-Yo さん
いっせいに
羽を広げ
南の方へ渡って行った
停まるべき場所を
失ったバスは
大人たちの口から口へと
走り続けている
高層ビルが突き刺さった
地平線の向こう側
人々はもう
何処にも行けない
気の早いタンポポが
春を待たずに
綿毛を飛ばす
少年が新しい角度へと
旅立っていく
作/Tsu-Yo さん