- / 07.07.17 記録
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― 現代詩フォーラム選集 ―
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いつか大人になる少女達へ(おもいで)
2007.09.14 Friday | 22:21
口笛が遠くまで聞こえるのは
まわりに誰もいなかったからだ
分かっていたんだろう
少女よ
どこにも行かなくていい
君が知ってる誰もかもは
どうせ君の知らない場所で笑っている
白く細く
くもの糸のような息を吐きなさい
どうせどこにも届きやしないが
それはそれでいい
(ゆっくりと
ぼやけた夜のヨーデルが
右頬をすり抜けていった
木々は倒れないように
ただじっと数をかぞえている
きっとそれらをゆっくりと包んでいく)
朝露を舐め続けて寄り道を忘れないで赤いリボンを外さないでくだらない
約束をくだらないと言わないで絵本を破り捨てないで雨を嫌いなままでい
てスキップをやめないで余計な物で飾らないで楽しそうに笑って夢で怖が
ってみせてよ、ねえ、それだけでいいから
枯れた花じゃ
押し花は作れないので
その時は惜しげもなく君を殺すよ
少女よ
作/からふ さん
まわりに誰もいなかったからだ
分かっていたんだろう
少女よ
どこにも行かなくていい
君が知ってる誰もかもは
どうせ君の知らない場所で笑っている
白く細く
くもの糸のような息を吐きなさい
どうせどこにも届きやしないが
それはそれでいい
(ゆっくりと
ぼやけた夜のヨーデルが
右頬をすり抜けていった
木々は倒れないように
ただじっと数をかぞえている
きっとそれらをゆっくりと包んでいく)
朝露を舐め続けて寄り道を忘れないで赤いリボンを外さないでくだらない
約束をくだらないと言わないで絵本を破り捨てないで雨を嫌いなままでい
てスキップをやめないで余計な物で飾らないで楽しそうに笑って夢で怖が
ってみせてよ、ねえ、それだけでいいから
枯れた花じゃ
押し花は作れないので
その時は惜しげもなく君を殺すよ
少女よ
作/からふ さん
空のオリ
2007.09.14 Friday | 22:19
昔行った動物園
何にもいないオリが一つ
風にふかれてパタパタと
白い張り紙音立てる
『キリンの花子は亡くなりました』
遠くで鳴いてる象の声
カバが飛び込む水の音
白い張り紙パタパタと
『キリンの花子は亡くなりました』
作/亜樹 さん
何にもいないオリが一つ
風にふかれてパタパタと
白い張り紙音立てる
『キリンの花子は亡くなりました』
遠くで鳴いてる象の声
カバが飛び込む水の音
白い張り紙パタパタと
『キリンの花子は亡くなりました』
作/亜樹 さん
こわいはなし
2007.09.14 Friday | 22:18
・
家を出ると
道端に
無数の舌が落ちていた
赤信号が
誰ひとり停められなくて
途方に暮れているような真夜中だった
舌たちは
うすべにいろの花のように
可愛らしく揺れながら
あたりの夜を
すっかり舐めとってしまう
すると朝がくるのである
そうやって夜が明けることを
二十三年間生きてきて
初めて知った
舌たちは明け方の光を浴びると
しゅるしゅるしゅると消えてしまう
ジョギングをしているおじさんが
呆然としているわたしにおはようと言う
・
恋というものは大変おそろしいと思う
どこへ行ってもそこにある全てが
好きな人に見えてしまう
一度など
ゴミ捨て場に捨ててあるビニル袋が
力なく横たわる無数の好きな人に見えた
あるいは
コンビニの陳列棚に
小さい好きな人がぎっしり詰まって
にこにこ笑っていたこともある
このごろのわたしときたら
外出もせず
部屋で背を丸めて正座をしている
それでも
自分自身が
だんだん好きな人になってゆくのを
どうしても止めることができないでいるのだ
なんという体たらくだろう
好きな人が遠ければ遠いほど
わたしがどんどんいなくなってゆく
・
心臓がない人と出会った
その人は青白い顔で
体もこころも冷たいままで
それでもずいぶん元気そうだった
そうして
自分がどうやって生きているのか
全然わからないんだよ
と笑っていた
その人は指先を切っても
血が出ないらしい
ただし無闇にのどが渇く
と言いながら
途方もない量の水を飲んでいた
ようく見てみると解るのだが
その人の体は少し透けている
・
作/吉田ぐんじょう さん
家を出ると
道端に
無数の舌が落ちていた
赤信号が
誰ひとり停められなくて
途方に暮れているような真夜中だった
舌たちは
うすべにいろの花のように
可愛らしく揺れながら
あたりの夜を
すっかり舐めとってしまう
すると朝がくるのである
そうやって夜が明けることを
二十三年間生きてきて
初めて知った
舌たちは明け方の光を浴びると
しゅるしゅるしゅると消えてしまう
ジョギングをしているおじさんが
呆然としているわたしにおはようと言う
・
恋というものは大変おそろしいと思う
どこへ行ってもそこにある全てが
好きな人に見えてしまう
一度など
ゴミ捨て場に捨ててあるビニル袋が
力なく横たわる無数の好きな人に見えた
あるいは
コンビニの陳列棚に
小さい好きな人がぎっしり詰まって
にこにこ笑っていたこともある
このごろのわたしときたら
外出もせず
部屋で背を丸めて正座をしている
それでも
自分自身が
だんだん好きな人になってゆくのを
どうしても止めることができないでいるのだ
なんという体たらくだろう
好きな人が遠ければ遠いほど
わたしがどんどんいなくなってゆく
・
心臓がない人と出会った
その人は青白い顔で
体もこころも冷たいままで
それでもずいぶん元気そうだった
そうして
自分がどうやって生きているのか
全然わからないんだよ
と笑っていた
その人は指先を切っても
血が出ないらしい
ただし無闇にのどが渇く
と言いながら
途方もない量の水を飲んでいた
ようく見てみると解るのだが
その人の体は少し透けている
・
作/吉田ぐんじょう さん